「ちょ、そんなに急がなくても」

優しい手のひらだが、グイグイと引っ張る彼の手はとても疾走感が出ていた。

「バカ薫、授業遅れたらどーすんの。」

あ、今バカって言いました?

怒るよ?

私怒っちゃうよ?

「う、っ、そ、そんなに睨まなくても…、わ、悪かったから!な、な?」

必死に謝ろうとする彼は私の目を見てきちんと言ってくれた。

だから、私も許してあげた。

「ん、いーよ。別に。あ。あと、口が滑っても"バカ"とだけは言わないでくれる…?次いったらマジで殴るから。」

「ああわかった、わかったから!」

と、焦りぎみで慌てる湊は子供のようだった。

なんか、子供を見ているような感じがして、私的には少しだけ癒された感じ。

すぐに謝ったりするところも、

一見不良に見えるところも、

全部面白いから。