……、特に何もなさそうだけど。

マリアは何を企んでるんだろう。

そう思っていると、教師らしき人が入ってきた。

「これから、担任になる"…"だ、よろしく。」

…?、

聞き取れなかったのは私だけかな。

何故か私はそこの部分だけ掠れたような感じに飲み込まれていた。

「よろしく、隣の人…、って、またあんた?よく会うね。」

こっちのセリフだよ。

いきなり現れていきなり消える優柔不断な奴め!!

どんだけ私が作り笑いしてると思ってんだよ!!

「あは、そうですね。」

感情を出すのが得意なんじゃなくて、人と話せないだけなの、頼むから気づけよ…!

「お前、名前何て言うの?」

…名前、かぁ。

そういえばあったな。

「私は、…薫。」

薫。

それはマリアがつけた名前。

名字なんてない。

どうすればいいのだろうと思ったけれど、この手があったとは。

「へー、良いじゃん。そういう名前好きだし。」

知るか、お前の好みなんて聞いてない!

「俺、聞いたかもしれないけど、湊。あの女は俺の女じゃねぇからな。」

んなことどうでもいいけどさぁ…。

「あ、そう言えば、私はここらへんのことをあんまりしらないんだけど、案内とかってあなた、してくれるの?」

ぽけーっとしてるので、言ってみた。

「あぁ、良いよ。折角の縁だし。」

そう言えば、

「授業までには戻ってこよう。」

…とだけ言って、彼は私の手をそっと握り、優しく引っ張った。