「…好きな人っていってもなぁ…、」

そう私が口ずさんだ合間に、下から物凄い大きな地割れが起こった。

「な、何これぇ!」

パニックになりすぎて、必死どころか目の前すら見えていない状況だった。

そして、私の目の前に現れたものは、

"学校"のような模型だった。

『はいはーい、聞こえますかー、皆のアイドルマリアだよー。』

いつものような軽めの口調に安心するが、この状況下では安心さえできない。

「マ、マリア!これなに!」

指を指してパクパクしながら言うと、マリアは、

『学校フィールドですよ。あれ、カオルちゃんが選んだんでしょう?、ゆっくり決めたいな、と。』

それはそうだけど……、

…と心で思いつつ、安堵のできないこの状況を私はどうにかしようとしていた。

「そう、望んだ!だから、とっととこの世界に入りたいの。」

そう言って手を広げればマリアは、

『勿論良いですよ、でも、注意してください。』

何が、と問いかける前にフッとまたどこかに消えてしまった。

「と、とりあえず誰かを探さないと…、」

そう考えていると、一人の少年が木の上にリンゴをとるために登っているのがわかった。

「あんた、何してるの?危ないから降りたら?」

そう言うと、彼は降りてきて、

「なんだよ、お前みかけねぇ顔」

なんて言うから、必死に

「転校生だからね!まぁ、うん!」

などと誤魔化し、うまくいった。

「やっぱり、この世界では私は知られてないんだろうなぁ…」

そう考えているうちに、日は暮れていた。

鈴虫がないているように聞こえる。

なんてリアルなのだろうか。

今まで骸人形のような沢山の人だらけの世界にいたから…。

この感覚が珍しいのかも。

空気も美味しいし、人と会話もできた。

…この世界は素晴らしい。