月の満ちる頃、光の園。

暗く細い道を、俺はひとりで歩いていた。




目元がひりひりと痛み、頭が痛い。泣きすぎて頭が痛くなるのも久しぶりだ。




今にも消えそうが街灯が、ちかちかと光る。同じように俺の心は今にも折れそうだった。





世界が壊れてしまう錯覚を見た。何も聞こえなくなった。





全てが無意味なものに感じるほど、俺にとって零は特別だった。
あいつがいなくなって世界が続くなら、この世界ごと消えてなくなればいい。




ただひとりで歩いているだけなのに、俺は変に妄想して、あいつがいない世界を作り上げている。





暗く細い、この道がどこまでも続いているように思える。これも錯覚なのか。





何が本当で、どこまでが妄想なのか。今の俺には正確な判断ができない。





俺をここまで落としたのは、あいつが事故にあって痛々しい姿で横たわっていたから、だけじゃない。




医者から言われた一言。





「このまま、昏睡状態になってしまう可能性が高いです。」





覚悟していてください、と。





その言葉が頭の中を掻き乱した。病室を飛び出した俺は、そのまま。今に至る。





どのくらい歩いたのか、もう街灯すら見えない。静かだ、何も聞こえない。





俺の歩く音すら聞こえない。バイクの騒音も、息遣いすらも暗闇に溶け込むように消えている。





でも今の俺には、正常な判断ができないのだ。





その程度のことに気がつく余裕もない。