━━━長々と続いた入学式も終わり、高校初めての授業。
これまた面倒くさい。
そう。最初の授業とはあれだ─自己紹介。
みんなの前で、自己をアピールしなくてはいけないのだ。
「(はぁー。自己紹介とか嫌だなぁ)」
氷は心の中でそう思った。
「じゃあ、自己紹介を始めます。まず自分の名前、誕生日は必ずで、あとは、好きなこととか趣味とかを言ってもらいます。」
え?趣味?
氷は戸惑いの表情を浮かべている。
「じゃあ、先生からいくよ。えー、私は藍田 真波(あいだ まなみ)誕生日は6月15日。趣味は映画鑑賞です。はい。次は雅楽星さん。どうぞ。」
そう言われて、輪は立ちあがった。
「雅楽星 輪です!誕生日は7月7日の七夕産まれ。好きなことは友達とおしゃべりすることです!これからよろしくお願いします!」
ハツラツとした輪の自己紹介にクラスメイトは拍手。
そして、次に回る。

──ついに、氷の番が回ってきた。
「えーっと、譯鵄 氷。12月21日産まれ。趣味は…特にありません。よろしくお願いします。」
氷の自己紹介が終わっても、拍手はあまりなかった。
終業のチャイムが鳴り、みんな輪の所に集まっている。
輪はみんなの心を掴んだらしい。
氷は鞄から本を取り出すと、読み始めた。
輪はそんな氷の姿を見ていた。
氷は視線を感じてその方に目を向ける。
氷と輪の目が合った。
だが、氷はすぐ目を反らす。

───全ての授業が終わる頃には輪はクラスのほとんどと友達になっていた。
「めぐるーん!このあとカラオケいかなぁい?」
クラスメイトの一人に呼び止められた輪。
「うん!行くぅ!」
そう返事を返して輪はクラスメイト達とカラオケに行った。
氷はそんなやり取りを気にすることなく帰路に着いた。