春さんに、書置きを残しやってきた会社。
ひと月ぶりくらいの会社に、ひどく懐かしさを感じた。



「沙紀!」



自分が働いていたフロアに行くと、綾乃が一番に駆け寄ってくれた。
きっと、私がくるのをずっと気にしてくれてたんだろう。


「綾乃、久しぶり」

「うん。久しぶり。目の下のクマ、大丈夫?」

「あ、これは、違うの・・・」



化粧でどうにか隠したつもりだったけど、綾乃にはばれてしまった。
でもこれは、本当に圭汰さんとは関係のないことだから。
心配かけないようにしないと。



「それより、書類って」

「あ、私が預かってる。部長は今会議に行っちゃったから。受け取ったら帰っていいって」

「そっか、ありがとう」





封筒に入れられた書類を受け取る。
ぐるっとフロアを見渡すと、チラチラと私の様子を伺っている元同僚の人たち。
声をかけてくれるのは、綾のくらい。