「・・・いた!」



遠目に見える二人組。
今まさに、ホテルの中へと入ろうとしているところだった。




「ちょっと、待った!」



息を切らせながら、後ろから沙紀の腕を掴み引き止めた。
沙紀は、ぐったりと頭を垂れ、よく見ると瞳も閉じてしまっている。



これは、酔っている状態ではない。
咄嗟的に、そう思った。




「ちょっと、どういう事?」

「あれ、君。この間の」



男は、人当たりの良い笑顔を浮かべている。
焦ったりもしないってわけか。



「説明してくれる?」

「説明って、沙紀ちゃんが酔っちゃったみたいだから休めるところに行こうと思ってただけだよ」