もう姿を偽ることも、隠れることもしなくていいんだ。
でも、どちらの春さんも、きっと本当の春さんで。



どっちも、私の大好きな春さん。




「そっか。でも、マンションは出なくちゃな。もともとは倖也のものだし。ずいぶん居座っちゃった」

「私も、すごくお世話になりました。お礼しなくちゃです」




春さんとの思い出が詰まったマンション。
最初は、こんな事になるなんて思ってなかった。

どん底に落ちたところからすべてが始まって。
そこで春さんに出会って。


それからは、新しい出会いと、ワクワクの数々で。




「沙紀、これまでずっと支えてきてくれてありがとう」

「私がそうしたかったから」

「沙紀のおかげで、こうして前を向けた。過去と決着をつけることができた」




少しだけ、春さんの瞳が潤んでいるように見えた。
ずっと苦しんできた。
辛い思いをしてきた春さんが、ようやく、自分の道を見つけたんだ。