俺には父親がいない。
正確にはいるけど、いない。
母親は、愛人ってやつで、俺は愛人の子どもらしい。
意味はよくわからなかった。
だから、母親に一度聞いたことがある。
「母ちゃん、愛人って、なぁに?僕、愛人の子どもなの?母ちゃんの子どもじゃないの?」
子どもの俺はバカ正直にそう聞いた。
その時の母親の顔は今でも覚えてる。
ひどく、悲しげな表情で笑ったんだ。
子ども心に、それは聞いてはいけないことだったのだと悟った俺は、それから一度もその話題を出さなかった。
でも、そのあと嫌でも俺に付きまとうことになった。


