「ワインでいいだろ?」
「・・・うん」
促されるまま座って。
差し出されるままグラスを持って。
「なにか、抱えきれない感情が渦巻いてるって顔してるぞ」
「・・・うん」
「彼の登場が、そうさせたんだろ?」
「・・・そう、なのかな」
自分でもわからない。
この感情が何なのか。
ただ、珍しく側にいてほしいと思った人がとられそうなのが、嫌なのか。
「わからないから、どうしようもできない。自分の感情のまま動いても、さっちゃん・・・沙紀を縛るだけだ」
「俺としては、最近の春の変化はいい方に行っているし。このまま、よくなっていってくれたらって思うよ」
誠は、こんな俺をずっと見守ってきてくれた人だ。
なにも言わず、必要な時に手を差し伸べてくれるような。


