「あの、すみません。僕・・・。口から出まかせを」

「あ・・・、ううん。ありがとう。おかげで助かった」




さっきまでの凛とした態度から、ふわっとしたハチ公へと戻る。
徹平くんが来てくれてよかった。


多分、私だけじゃあんな風に撃退できなかった。
どこかで、私が好きだったころの先輩を思い出してしまうから。
戻ってくれるんじゃないかって。


好きな気持ちが戻るわけじゃないけど、話せば本当にわかってくれるんじゃって・・・。


でも、もう無理なんだってわかった。




「ごめんね・・・巻き込んで」

「いえ。でも、ひどいですよ。一緒に帰ろうと思ってたのに、僕がトイレ行っている間に帰っちゃうんですから」

「あ、ごめんね。急いで帰ろうって思ってたら、逆に迷惑かけちゃった」

「お詫びに、僕に送らせてくださいね」

「それ、お詫びなの?」

「はい」




にこっと笑った徹平くんのおかげで、身体の震えはすっかり消えていた。