「じゃあ、春さん、いってきます」

「いってらっしゃい。気を付けてね」



ハローワークに向かおうと準備をして部屋を出る。
春さんは今日も仕事らしい。
仕事に出るのは夕方だから、まだ家にいる。


エレベーターで下まで降りるとマンションを出る。
出たところで、騒がしい声が聞こえた。



「―――今更どの顔下げて現れてんだよ」

「しかし、今会社の危機的状況なんです!」

「そんな事、俺が知るか!」




なんだか、言い争っているみたい。
少し気になって声のする方を覗き込む。


そこにいたのは、倖也さんと見知らぬスーツ姿の男の人だった。




「戻ってください!倖也さん」

「しつこい。自分がしてきたことよく思い出せってあのくそジジイに伝えとけ!」




倖也さんはそう怒鳴ると踵を返しこちらに向かってくる。