「そうだよ。会社辞めたし、俺の事好きみたいだから簡単にヤレると思って声かけたのに。見当違いもいいとこ」



なんの話をしているの。
胸がざわめく。



「最初で行けるかと思ってたのに、意外とガード堅いんだよ、お前どんだけの女だよって感じだし」



圭汰さんは、周りに人がいるはずないと思っているんだろう、声を潜めるでもなく普通の声量で話していた。
圭汰さんが、こんなところでサボっていることも、圭汰さんらしからぬ口調とか、話の内容に、私は動揺していた。


昨日のことがあって、綾乃にも聞いていたから覚悟はしてた。
信じたくなかったけど、圭汰さんがそういう人かもしれないって。



でも、こうして現実として目の当たりにすると。



「あー、じゃあな。今度飲み行こうぜ」



圭汰さんは電話を終え部屋を出ようとガチャッとノブを回す。
私は、咄嗟に動くことができなかった。


圭汰さんが話しているのは、確実に私の事。