人気がなくなり、学校からも随分離れた。もうこの辺りでもいいだろう。

「離して」

突っぱねるように足を止め、瀬川を見上げる。思ったよりもすんなり手を離してくれた。

「瀬川氷蓮。あんたは何を知ってるの。どうしたいの」

睨むように見つめ、問い詰めるように問いかけた。彼はきょとんと小首をかしげるだけ。その動作はまるで……。

「君の過去を知っている。話がしたい」

『過去を知っている』カッと頭に血が上る。同時に血の気が引く。体が矛盾している。

頭は熱いのに体は冷えきり、震え出した。ギリギリと拳に力が入る。

「藤堂恭一郎」

耳慣れない名前をぽつりと呟く。

「君は恭一郎を探しているの?」

誰?という問いはしなかった。耳慣れない知らない名前。でも私は知っていた。

その人がきっと彼だということを。

静かに頷く。震えていることがバレないように、動揺していることが悟られないように。

「恭一郎は死んだよ」



「……え?」