化け物カレシ

ピッピッと無機質な機械音が聴こえる。でもまだ真っ暗なままだ。

トク…ン…

何かが私の中に入ってくる。温かくて不思議と心地いい。脆くて断ち切れない、何か……。

トク…ン…トク……

温かい何かが体をめぐる。手の先、爪先へと行き渡り、体が熱を持ったように感じる。まるで生き返るみたい。

「イブ」

懐かしい。あの時以来だ。私が『イブ』って呼ばれるのなんて。

「目を、覚まして」

そうか、私、寝てたんだ。起きなきゃ……。

重いまぶたをゆっくり開ける。白くて眩しい景色があたりを包んでいた。

しばらくするとぷんと医薬品の、独特な匂いがした。段々意識がはっきりしてきたおかげで体のあちこちが痛み出す。

「せ……ぁわ…」

ベッドサイドにいた瀬川が勢いよく立ち上がる。勢い余って椅子が倒れかけるほどに。

「伊吹」

こんな瀬川の表情は初めてだ。いつもどこか無関心でやる気のない目をしていたのに、今は泣きそうな顔になったり安心したりと、忙しなく変わっている。

「わ…たし……?」

声がかすれて上手く喋れない。

「伊吹。ごめん、僕のせいで……」
「なん、で……?」

俯いて僅かに肩が震えていた。瀬川はこんなに感情豊かだったのか、と呑気に考えていた。

「伊吹は不老不死になりたいなんて、思わないよね」

話に脈絡が見いだせず、頭がついていかない。

「……ごめん、なんでもない。今は休んで」

ふわっと瀬川は私の頭を撫でた。ゆっくり、優しく……。大きくて少し骨ばっていて、温かい。
安心感がある。

私はまたまぶたを閉じて意識を手放した。