化け物カレシ

私は彼にどういう行動を求められているのかわからなかった。

「なにぼーっとしてるんですか。早く荷物貸してください」

--何故荷物を……?今から帰るのに……。

「ほーら!早くしないと先生にどやされるんですけどー」

わけもわからないままおずおずと両手を伸ばす。すると暮内はにっと笑って受け取った。そのまま私の前を歩き始める。

「先輩ん家こっちですか?」

正門を出て左の道、さらにそこは国道沿いと旧道とでわかれている。暮内は旧道の方を指さしていた。

「どっちからでも帰れるけど……」
「んじゃこっちからで。その方が車通りもなくて安全ですし」
「まっ--」
「なにやってるの?」

私の声を遮るように、かぶせられた声は紛れもなく瀬川だった。

「あれ、ひ……瀬川先輩じゃないですか。なにやってるんですかー?」

お互い見知った風で歩み寄る。どことなく、瀬川は不機嫌そうに見えた。

「暮内、伊吹になにしてるの?」

まるでそれは暮内を責めるような、そんな感じだ。

「やだなぁ、橘先輩を送って帰ろうとしただけですよ」

それに対して随分にこやかに受け流す暮内。瀬川はむしろそんな態度が苛立たしく思えるのだろうか、さらに険しい顔つきになる。

「伊吹が困ってた。ちゃんと説明して許可をもらったの?」
「じゃあ先輩は誰に許可を得て、橘先輩を呼び捨てにしてるんですか」

2人の空気は重くなる一方。ただこの話のメインは私、らしい。その私は会話に入れないまま……。

「とにかく、私もう帰らせて欲しいんだけど……」
「あ、すみません。行きましょうか」

再び歩き出した暮内。正直1人でいいんだけど……。

すると瀬川も同時に歩き始めた。まるで私と、暮内と一緒に帰るかのように。そしてまた暮内はそれに対して怪訝な顔をしていた。

「瀬川先輩はこっちに何のようですか?」

愛想のいい笑みを浮かべているのに、刺を感じる。

「僕も帰るだけ」

しれっと正当な理由を述べる。それが本当かどうかはわからない。

しかしこれだと周りから私はどう映るのか、やけに人目をひいた。