化け物カレシ

それからしばらく、私は瀬川を徹底して避けた。瀬川もわざと私に接触してこようとはしなかった。

『嫌い』と宣言した相手には近づこうとなんてしないだろう。当たり前だ。

--なのに。それなのに、心のどこかで本当は来てくれるんじゃないかって期待してた自分がいた。馬鹿らしい。たとえそれが恭一郎であったとしても、来ない。

「先輩」

目の前にふっと影が指した。思わず顔を上げると見覚えのある、だけど覚えてはいない子が両手にプリントを抱えて私を見ていた。

「なにやってるんですかもう…!委員会、今日あったのに」

言われてはっと気づく。そう言えばいつの間にか委員会に任命されていたんだった。

「これ、配布物です。それから先生には先輩は保健室で休んでるって言ってあるんで、さっさと帰った方がいいです」

抱えていたプリントを手渡され、柔らかく微笑まれる。人当たりのよさげな、人懐っこい印象の1年生。

「ごめん。ありがとう。えっと……」

しかし名前は出てこず、言い淀む。後輩くんはちょっと拗ねたように口を尖らせて自己紹介をしてくれた。

「暮内空です。同じ委員会の1年です」
「暮内くん、ね」

繰り返し唱えるように呟くとますます拗ねたような顔をした。

「酷いなー。同じ委員会で、俺は先輩のことちゃんと覚えてたのになー……」

ぐうの音も出ない。全くもってそのとおりだ。

「俺は眼中にねぇのかな……」

とかなんとかぼやく暮内は女の子によくもてそうな雰囲気だった。チャラいわけでもなく、しかし気さくで話しやすい。

「先輩」
「なに?」
「なに?じゃないですよ。早く帰りますよ。ほら、荷物」

すっと差し出された手にどうしていいのか分からなくなる。