だが、手を汚さないだけ。

耕介が実際に手合わせした通り、鏑木は十分に暴力のプロとしても通用する。

以前、歌舞伎町を拠点とし、『眠らない街の半グレ』とも称される『武(もののふ)』と呼ばれる集団のメンバーの1人が逮捕された。

飲食店がみかじめ料を払うのを拒んだ為、飲食店に危害を加えたのだ。

取り調べに対し、彼は『飲み屋に悪さをしたり、店内で暴れろと命じられたから』と証言した。

それを命じたのが、鏑木だとされている。

武のメンバーの内、暴力団に属していない者も、実態は『完全にヤクザ。寄り合いや義理に呼ばれないだけ』と述べている。

「待て待て」

耕介が口を挟む。

「鏑木は東京連合だろうが。何で武のメンバーに命令できんだよ」

「頭悪ィなテメェは」

我妻は言った。

「武だ東京連合だ言ってるが、結局はどっちも鏑木の支配下なんだよ」