六本木、とあるクラブ。

「ちょっと訊ねたいんだけどよ」

ヨレヨレのダークのスーツを着た男が、入り口に立つ。

「この店に、鏑木って奴いる?会いてぇんだけど」

「……誠に失礼ながらお客様」

入り口に立っていた店員らしき男が応対した。

「他のお客様のプライベートな質問に関してはお答えできかねます。それにお客様のお召し物…そのような格好では、当店のVIPルームへの入室はちょっと…」

「あっそ、鏑木はVIPルームにいんのな、サンキュ」

店員の言葉を聞いて、ダークのスーツの男…耕介は店内に入っていく。

「あ、ちょっとお客様!」

思わず耕介の肩を摑む店員だったが。

「あぐっ!」

店員は逆に、耕介に手首を捻り上げられた。

「俺は『入らせてくれ』ってお願いしてんじゃねんだよ。『入るから退け』って言ってんの」