丁度その時だった。

事務所のドアが開く。

…耕介は推理する。

初めてここを訪れる人間は、まず呼び鈴代わりのブザーを押す。

ブザーが壊れて鳴らない事を知らないからだ。

それを知っている人間は、ドアをノックする。

まぁ入る前にノックするのは礼儀だろう。

ノックせずに入ってくるのは、この事務所に不法侵入しようとする者。

だが、事務所の主である耕介の前歴を考えると、ここに不法侵入しようとする馬鹿はいない。

耕介にどんな目に遭わされるか分からないからだ。

ならばノックもなく、この事務所に入ってくる者。

導き出される答えは1つ。

「また来たのか」

耕介は座ったまま呟いた。