と。

車道を走る1台の車と擦れ違った。

黒のアストロ。

アメリカの自動車メーカー、ゼネラルモーターズがシボレーブランドで販売したミニバンである。

別に車自体は、珍しくも何ともない。

だが。

「!」

後部座席の窓ガラスを必死に叩く少女の姿を、耕介は見逃さなかった。

ウインカーを出して左折するアストロ。

左折と同時に、車内に引き込まれる少女の姿が見えた。

見間違える筈もない。

あの少女は雛罌粟だ。