ヨレヨレのダークのスーツを着た無精髭の男。

以前は黒髪短髪だったが、最近は忙しいのか無頓着なのか、伸び放題の髪はボサボサのままだ。

冬に買った、ホームズ気取りの安物のインバネスコートはハンガーにかけられたまま。

ディスカウントショップで買った靴は、今年何足目の購入だろうか、もう相当に磨り減っている。

机の上に足を上げ、椅子の背凭れに仰け反り、横柄な態度をとるこの男。

名前を蓮杖 耕介(れんじょう こうすけ)という。

しがない私立探偵を営んでいる。

事務所はいつだって閑古鳥。

事務所の家賃だって、やっと支払っているような状況。

これでも改善された方なのだ。

以前はやっと支払っている所か滞納していたのだから。

シャワーしかなかった事務所のバスルームにはバスタブがついた。

六畳間用のもので我慢していたエアコンも、最近になって業務用を購入した。