電車を乗り継いで、雛罌粟が降り立ったのは六本木だった。

バーやクラブが軒を連ねる『大人の街』。

歌舞伎町や秋葉原、渋谷や原宿とは、些か違った雰囲気を醸し出している。

制服姿の雛罌粟が歩いていると、場違いな雰囲気さえ漂う。

繁華街のけばけばしさとはまた違うネオンの中を歩いていた雛罌粟は。

「おい」

突然呼び止められた。

…援交目当てのJKと勘違いされたか。

今でも夜の街を歩いていると、雛罌粟はこうやって声をかけられる。

過去はなかなか拭い去れないものだ。

内心自嘲しながら振り向く。

助平なサラリーマンか、ぎらついたチンピラか。

どうやって断ろうかと考えながら顔を見ると。

「テメェ何こんなとこウロウロしてんだこの野郎」

立っていたのは紺のドカジャンを着た我妻だった。