東京都千代田区平川町。

ゴミゴミした路地裏に、その安っぽい事務所はある。

呼び鈴代わりのブザーは、いつ来ても壊れているのか鳴らない。

呼び出すにはドアをノックし、呼びかけなければならない。

ドアを開けると、日の光は差し込むものの、どこか薄暗い部屋。

光の中で、埃が舞い上がっているのが見て取れる。

あまり掃除は行き届いていないようだ。

中に入ると、まず狭い廊下。

床に雑誌やら新聞やらを括ったものが無造作に置いてある。

ゴミの日に出し忘れたのだろうか。

その廊下を進むと数段程度の階段があり、それを下りると薄汚れたフローリングの床。

壁に沿って本棚が幾つか。

部屋の中央にはソファと小さなテーブルが置いてある。

恐らく来客用だろう。

その奥、大きな窓際に机とキャスター付きの椅子。

その椅子に、男はいつも座っている。