「本当にできたの!?」
少しトーンの高い女性の声が屋敷に響いた。香織の母、三津橋 優美の声だった。
「うん!」元気よく香織は答えた。「そう…」
優美は黙ってしまった。驚きで黙ったと言うより恐れで黙ってしまったようだった。
香織は、頭にハテナを浮かべて母の顔を
のぞき込んだ。「どうしたの・・・?」
すると優美は我に返ったように香織の顔を
見て「わかったから早く学校に行きなさい!」と、起こったように香織を屋敷から追い出してしまった。
(もう・・・ママ酷い。)
香織は慌てて履いたスニーカーの後ろを
踏んだままランドセルの紐をぎゅっと握ってドスドス歩いていた。
彼女は、三津橋 香織。
現代、東京世田谷に大きな屋敷をかまえ、
港区の大企業の社長である父と屋敷の近くでパン屋を営む母の娘である。

この世界には全世界人口の約100分の一の
確率で¨魔法¨と呼ばれる水を操れる者がいる。どうしてそのような人間がいるのか、また、なぜそんなことができるのか、
未だに化学でも証明されていない。この世で最も大きな謎だった。


キーンコーンカーンコーン…
香織の通う小学校に規則正しく校内に響く鐘がいつものように8時30分になった。
4年1組出席番号23番である香織は、だるそうに出欠をとる担任をこちらもだるそうに見ていた。(なんでママはあんなに怖がってたんだろう…)一ヶ月前授業で耳にした100分の一の確率でいる¨魔法¨が使える人。そのときの自分の輝いた瞳、朝に始めた練習…そしてそれを全て明るく見守ってくれた母。頑張った娘を見て怖がる母など香織は想像出来なかった。
(まほうが使えるってダメなことなの…?)
「三津橋、…三津橋!」担任教師が少しイライラして香織を呼んだ。「なにボケーっとしているんだっ!出欠ぐらい聞いてなさい!」
周囲の生徒達が香里を見てクスクス笑っていた。「香織ちゃんってなんか面白いよねー」「最近魔法れんしゅうしてるの!とか、なんか幼いよねー」4年生のくせに大人ぶった¨近づきがたい奴ら¨だった。
香織は小学校に入った時からこーゆー奴が
嫌いだった。(別に人の勝手なんだからいいじゃない)そう心の目で睨みつけるとその¨近づきがたい奴ら¨の女子達はそれを察したように黙った。
こうして、日常らしきものが始まった。