やってしまった…………


私は帰宅後もドキドキが続いていた

とうとう私の気持ちは谷田さんに通じ




私達は、キスをしてしまった




谷田さんとキスをした後

「明日、二人でどっか行く?明後日の夜に嫁が帰ってくるからさ」

谷田さんがデートに誘ってくれた

凄く嬉しかった

二人でお店を考えて携帯番号もアドレスも交換せずに私達は待ち合わせ場所と時間だけを決めて別れた

互いに遠慮してた

奥さんがいる、彼氏がいる

それを知ってるから互いの情報を互いの携帯に残さないようにしなくてはと思ったから

谷田さんとのキスに私は久々にドキドキさせられた

付き合って長い拓斗とはもう忘れ始めている感覚かもしれない





次の日、私は朝から緊張しっぱなしだった

前の直也達がいた時よりも断然緊張していた

そんな私をよそに17時の定時を迎えた

と、同時に私は今日も残業せずに会社を飛び出した

待ち合わせ場所にかなり早めに着く事ができた

メイク直しをしながら車の中で谷田さんを待つ


約束の時間を少し過ぎ谷田さんの車が見えた



来てくれないんじゃないかとずっと心配していた

遊ばれたかもとか正直考えていた

車から降りてきた笑顔の谷田さんを乗せて私は約束のお店へ車を走らせた

禁断の初デート



前みたいにおしゃれな個室のお店ではなく互いの地元より少し離れた居酒屋

ゆっくり食事したつもりだったけどお店を出た時間は思ったより早くて

「ごちそうさまでした…また奢ってもらっちゃって……」

「めちゃ安かったなぁ」

「この前も払ってもらってるから今月、谷田さん貧乏になっちゃう」

「んな事ないって!!大丈夫大丈夫」

谷田さんは大きく笑った

このまま帰るのかな…まだ時間早いしもう少し一緒にいてくれないかな…

「今21時かぁ…どうする?もう帰る?」

「もう、帰るんですか…」

私は残念で仕方なかった

「どっか行く?」

谷田さんは私を見つめて聞く

「………」

言葉に出せず黙って谷田さんを見つめた

こういう関係って行き先は何となく決まってる気がした

どちらか一方でも好意のある大人の男女の関係ってやっぱりそうなるものなんじゃないだろうか

我ながら浅はかな考えだなと自分をバカにしながらも私は黙って谷田さんを見つめていた

谷田さんは何かを悟ったように

「………行く?」

遠慮がちに私に問いかける

私は黙って頷いてしまった

「運転は谷田さんがしてほしいです。谷田さんの思う所に連れてって下さい」

「わかった」

いつもの優しい微笑みの谷田さんに運転席を譲った



私は拓斗以外の男性を知らない

ごめん。拓斗

私は自分を止められそうにない

最低な自分を自覚しながも私の気持ちは止める事はできなかった