九月十六日。
今日は私たちFour Rosesの三ヶ月ぶりのLIVEの日。


朝から車で鳥羽まで来た先生は、
我が家の駐車場に車を停めるとお父さんに挨拶だけして、
自宅スタジオから、ドラムセットを運びだしていく。

このドラムセットはお父さんの趣味なんだけど、
碧夕が来ると楽しそうに叩く、お気に入りアイテム。


そんなドラム機材を運びだしては、ハイエースに積み込むのを手伝ってくれる先生。


私のギターも積み終えると、「夜に母さんと行くからな」っとお父さんは
私たちを送りだす。

何時もは運転席に乗る私も、この日は先生が「鍵をかして」っと掌を出して
私が反射的に置いたのと同時に、運転席のドアを開けて乗り込んだ。


私はもう一つの空いた助手席のドアをー開けて、乗り込むと車はゆっくりと自宅を出発し始めた。


最初に歩乙衣を迎えにいって、その後は碧夕を拾っていく。

元葵たちも裏方を手伝ってくれることになってて、
ちょっとした同窓会的になりそうな予感のLIVE。


車を運転してた孝悠さんが、何処からか一枚の封筒を取り出して
私の前に差し出す。


「開けてみて」


そう言って手渡されたそれを、私はゆっくりと開けると
そこには、見たこともない小さな赤ちゃんの双子写真。


孝悠・孝輝誕生。
写真の裏にメモられた文字。



「嘘っ……これ先生とUNAなの?
ちっちゃい……」


思わぬ掘り出しものの写真に驚きながら、
私は写真を再び封筒に片付ける。


その時、写真とは違うもう一つのものを見つける。
それは石を繋げて作ったブレスレット。




あれ……これって。




そのブレスレットは、昔UNAがつけているのを見たことがある。



「これって、同じやつUNAがしてた……」

「あぁ。
 このブレスレット、俺たちの母親が何処かで作って来てくれたものなんだ。

 何か有名な先生の力が入ってるとか言ってた」



そう言って先生は、自分のブレスレットも見せてくれた。



先生とお揃いのブレスレット。


そして今、私の目の前にあるのは……二つしかないものだったら
UNAのブレスレットか、先生のブレスレットかのどちらかのはずなわけで。



「お守り代わりに持ってなよ。
 楓文の夢を叶えるためのお守り。

 孝輝が夢を叶える手助けしてくれると思うからさ」
 


先生が告げたその一言で、このブレスレットが先生が大切にしてきたであろう
UNAの身に着けていた宝物だと言うことがわかった。

嬉しいけど……貰えないよ。


そう言って返そうとした時、赤信号で停車したタイミングで
先生の早業で、手首におさまってしまったUNAのブレスレット。