あなたと出逢わなければ 【第一楽章のみ完結】



UNAの命日。

開かれたパンドラの箱は思っていた通りで、
それでいて違っていた。

違っていたのは先生が抱え込んでいた苦しい過去。


そんな先生の過去を知るたびに、
UNAは好きだけど、恋じゃなくて憧れと尊敬の好き。


祥永への好きは……友情の延長線上にある恋人ごっこが、
したかっただけのようにも思う。


だけど……先生は……孝悠さんは違う。

UNAに似てる。


出逢ったきっかけはそうだったかもしれない。
興味を持った瞬間は、UNAだったかも知れない。


だけど孝悠さんは、UNAじゃない。

それは、はっきりとわかってる。


マクサで出逢って、神宮で再会。
それだけでも凄いことなのに、神様はまだ私たちに縁をくれた。

先生がお父さんを助けてくれた。


少しずつ出逢いが増える度に、ドキドキして先生が気になって仕方なかった。
先生を純粋に探して、追いかけて、ドキドキしながら話かけて。



私は初めて、これが本当の恋なのかもって思える、
どうしようもない心を知った。


私……先生が好きなんだ。
先生に恋してるんだ。






そんな先生が……見せてくれた、土山での本音。




ずっとずっと、UNAのことで誰にも言えないまま
苦しみ続けていた闇を知って、心の底から抱きしめたいって思えた。



気がついたら……偉そうなことを告げて、
生意気にも先生の頭を、よしよしと撫でて……。



大人なはずなのに、時折物凄く子供に映ってしまう先生を知るたびに、
愛おしくなって母性本能が擽られるのか、抱きしめてしまいたくなる。



こんなの初めて……。





ただ車内で寄り添って抱き合ってお互いの温もりを感じながら
時間をやり過ごした。





暫くして、我に帰った先生は照れくさそうに「顔洗ってくるよ」っと
運転席を出て行く。



車内に残された私は一人……、
さっきまで、この身に起っていたことを思い返しながら
にまにまと笑みを零してしまってた。


ダメだ……頬が緩みっぱなしだ。



先生にキスをされたこと……先生が抱きしめてくれたこと。

ほんの少し前のことなのに、
離れてしまう、夢だったみたいで不安になる。




鞄の中からスマホを取り出して、
待ち受け画面のUNAに小さく『有難う』っと呟いてみる。


画面の中のUNAが祝福するように笑ってくれた気がした。