「まただ……。
 勢力さん、UNA好きなの?」



運転し始めた私に先生は問いかける。



「はいっ。
 中学の時に出逢って、LIVEも行ってました。

 けど鳥羽に住んでると終電なくなるから、
 お父さんに大阪とか、名古屋とか迎えに来て貰ってた。

 先生もUNA知ってるの?」



ウナイっと言う先生の苗字。
UNAそっくりの容姿。


何か謎が解けるかもしれないと話題に触れる。




「あぁ、知ってるよ」




先生は溜息を吐き出すように、
そうやって告げると、それ以上は答えてくれなかった。




病院から目と鼻の先のレンタルショップ兼本屋さん。


こうやって一緒に乗ることが出来るなら、
もっと違う場所を目的にしてたら良かった……。



車はあっという間に、目的地の駐車場へとついて
車を降りたところで、夜空を彩る大輪の花がドーンっと言う音と共に広がっていく。




「あぁ、綺麗……」


思わず立ち尽くして空を見上げた私の隣、
UNAそっくりの先生は、寄りそうように立った。



「ねぇ、先生。
 もう少し……一緒にここで花火見ませんか?
 迷惑じゃなかったら」

「構わないよ。

 こちらこそ、勢力さんのエスコート役には
 俺は物足りないかもしれないけど……」




勢力さん。

そうやって他人行儀に名字で呼ばれるたびに、
名前で呼んで欲しくなる。



花火をボーっと見つめながら、
私は先生に呟く。




「勢力さんじゃなくて……楓文って呼んで貰えませんか?」



彼女でもないのに……何言ってるんだろう。



彼はお父さんを助けてくれた人で、
UNAそっくりな人。


私より、ずっと年上の存在なのに……
私なんて、相手されるはずないのに。


わかってるはずなのに、一緒に居る時間が増えると
それだけ期待してしまってる私が居る。



先生のことが本当に好きなのかどうかすらも
わかっていないのに。




「ふゆき……ちゃんっでいいかな?
 だったら俺のことも、孝悠とか……ハルとか」

「うーん。
 でも……先生は先生だから。

 あぁ、花火。次まで時間かかりそうですねー」

「その間に買い物をして、また見たらいいよ」



その言葉に私たちはお店の中に入って、
それぞれに目的のものを手にして外で出ると、
再び車に持たれるようにして、夜空を見上げてた。



周辺の駐車場には、レジャーシートまで敷いて座り込んで夜空を見上げてる人達も何人か居た。