祥永と別れて一ヶ月が過ぎようとしていた。
季節は梅雨の時期。

私が舞女として、Four Rosesのボーカル兼ギターとして
活動をはじめて三ヶ月が来ようとしていた。


祥永と別れて以来、GWの慌ただしい時期を除いて
毎日のように、エチュードに集合しLIVEの準備と練習を行っていく。


そんな中、お父さんの付き添いで向かったマクサ。

その日のLIVEは、マクサのスタッフさんとか関係者が出演する
LIVEで、幼い日の私も時折、お父さんに呼ばれてステージにあげて貰ってた
懐かしいそんなイベント。

あの頃と今の私のステージは、思っていたものとかなり違ってしまったけど
今の嬢メタルって言うジャンルも、心の葛藤を吐き出せるって言う意味では
私に向いてる気がする。

そう言う意味では、今の仲間たちと出逢わせてくれた
マクサのマスターや、スタジオのスタッフさんには感謝してもし尽くせない。




「ちょっと聞いて。
 六月十五日の水曜日のLIVE。
 マクサ、チケットソールドアウトになったって、この間マクサ行った時に
 マスターが教えてくれたよ」

「えっ、やったね」

「けど……Noir【ノワール】とか、ファラーシャもあるじゃない?」

「確かにわたしたちだけの力じゃないかも知れないけど、
 それでも完売したのが嬉しいじゃん。

 後は成功あるのみでしょ」

「そうそう。24日には名古屋のハートランドもあるしね。
 そっちは、Noirの拠点だけど、マクサは私たちの拠点だもん」

「だね……。
 気合入れなきゃ」

「あっ、後……Noirの朔【さく】と、ファラーシャの叶凛【かなり】さんから
 全員でそれぞれの曲を一曲ずつやろうって、連絡来てたんだ。
 
 今から楽譜配るねー。んで、私たちの曲もポラリス渡しといたから」



私と碧夕を中心に練習の合間に、マスターから仕入れた情報を話してると、
歩乙衣が鞄の中から譜面を手にして、そのまま譜面台へと置く。



「あっ、Noirは堕天使狂舞。
 これっ、盛り上がるけど……かなり激しいよね」


そう言いながら、そのままギターを抱えてコードをほ辿りながらそのまま数フレーズ演奏していく。


「んで、ファラーシャからは、聖なる者よ」

「あっ、私その曲好き。
 ベースライン気に入ってるんだよね。
 
 歩乙衣、サビのところ少し弾いてよ」


碧夕のその言葉に、歩乙衣は譜面をめくって、そのままベースラインを辿り始める。


歩乙衣のベースが鳴り始めると、碧夕はそのままドラムを重ねるように叩き出して、
私もギターの音色を重ねながら歌い始める。


何となくの雰囲気は掴めてる。
後は合同曲も物にする。


腹筋を意識して、喉に落とさないように前に出す。
口の中に籠らしていては、ファンに声は届かない。

前に出しながら鋭く。
時に凛と響かせて。


マイクの位置を図りながら、この曲に一番ベストな立ち位置を探していく。




その後も、本番前日まで毎日のようにスタジオを借りて練習して、
練習の後もメンバーの誰かの家に集まって、最終アレンジの確認をしたり、
アンプを繋げずに、その場でギターやベースを爪弾く。

碧夕の家の場合は、ドラムは電子ドラムを鳴らしながら確認して、
歩乙衣や我が家では、テーブルの上にタオルや枕、ゴム板とかを置いて
リズムをとり続ける。

睡眠時間を削って、それぞれの集まってる家から職場へ。
そしてまた仕事が終わったら、スタジオに集合して練習する日々の繰り返しだった。