「私を待ってる大切な人がいるんです。」







長い髪の女の子が涙をこぼしながらそう言った。







目が覚めると僕は、広い草原の中にいた。







暖かく日が差し込み、優しく彼女と僕を包んでいる。







「君、誰…?」







僕が聞くと。







「会えば分かります」







そう言うと彼女は堅かった泣き顔を緩ませ、僕に微笑んだ。







相手は誰か分からないけれど、僕にとって忘れていた大切な人なのかもしれない。







もしそうなのであれば。







彼女の言うように僕らは必ずどこかで巡り会えるはずだ。







「お願いです…翔也。



必ず翔也の元へ会いに行きます。
その日まで…私を待っていてくれませんか?」







僕は、彼女の言葉に頷いた。







彼女が必ず会えると言っているのだ。







僕らはきっとどこかでまた巡り会える。







それは確信と言っていいほどのものだった。








「…今はまだ君が誰かは分からない…

けど…僕も君に手が届くようにする…。


…だから。



君も僕のこと、待っててくれない…?」







僕が言うと彼女はまた大粒の涙をこぼして頷いた。







そして。







「ありがとう、翔也。また会える日まで…」







………………………………待ってるから。







透けゆく彼女は言った。







手を伸ばすとまだ間に合った。







彼女の細い指と僕の指が触れる。







だけど彼女の細い指は淡い光になって消えていった。







一人残された僕は、この広い草原の中を自分の信じる方向へ真っ直ぐと歩いて行った。







これが、僕がいつも見る夢の内容である。