俺も、誰かに話しかけるのが不得意な訳じゃない。
けど、それは、向こう側に話す意思があっての場合で、今回のあの男のように、他を一切遮断するような人間に通用するもんじゃない。
現に、あの男と交わせた言葉は、今の所、酒の名前以外にない。
そこで、俺は崇を選んだ。
月曜日に何をやっているかは知らないが、クラブに来てもらうことにする。
崇はかなり嫌々な顔をしていたが、出会ってから今迄、俺の言う事に、一度も嫌だと言ったことがない。
だから、今回も、断られるなんて恐れは微塵もなかった。
結局酒瓶を呷りながら、崇は渋々頷いた。
午前零時に来ることは敢えて伏せておく事にする。
それは、崇自身に、見つけて欲しかったから。
誰でも引き付ける、いや、惹きつける、あの男を見れば、命令でなくても、崇は興味を持つようになるだろうと踏んでいた。
そして、その予想は適中した。


