「裏から回って」


「えぇー、俺18だぜ?」




肩を竦めてみせる少年。

これだからガキは。



「お前何しに来たんだよ。クラブに来たのか?」



「違うよ。ルナに入る為に来たんだ。」



「じゃ、やっぱり裏から。」



「了解。」




今度は納得したのか、素直に頷いた。




一旦外に出てから、ぐるりと半周して、裏口に回る。



「名前は?」


そういえば、と思い出したように訊ねれば、少年はにかっとまた笑った。



「崇めるって書いて、崇。」



「へぇ。上は?」



裏口は、大概、開いている。


何かあった時、直ぐに出れるように。


俺は、ステンレスのノブに手を掛けて、崇を振り返る。




「ー無い。」



「無いんだ。」



「駄目?」



「いや。奇遇だなと思って。」



ようこそ。ルナへ。



「奇遇?」




扉を開けて、中に入るよう、崇に促した。




「俺もないんだ。」