「お兄ちゃーん、ありがとう!」
後ろを小走りに付いてくる葉月の足音。
「んー…こんなんで良かったの?」
立ち止まって、顔だけ振り返れば、彼女の満面の笑みが待っていた。
「うん!」
その笑顔を見ながら、俺は心の中で、後悔していた。
「そっか」
ーまた変な拾い物をしちまった。
厄介なものは、これ以上要らないのに。
さっきの少年と、あの時の葉月の顔が重なって見えたなんて。
自覚したくないのに。
1ミリ程度の厚さの苦味が込み上げてくる。
でも直ぐに無くなる。
闇は、黒いから。
直ぐに楽になる。
負の物が、負の物を引きつける。
引力には誰も抗えない。
自然の摂理だ。
俺はそれを利用すればいい。
取り込んで、取り込んで、できるだけ集めて。
壊して。
失くせば。
ほら、元通り。
最初から、何もなかったことになる。


