追い込まれた痩せた少年は。
「…へへ」
どう考えても絶体絶命のこの状況で笑っていて。
やや垂れた目が、人懐っこい印象を与える。
だが、口元は切れて、血が出ているし、左目も腫れている。
「ーうわ、笑ってるよ。」
「マジで勘弁なんねぇ。腹立つ。」
5、いや6人。
チビの少年1人に、そんなに必要か。
「直ぐに笑えなくしてやるよ」
パン、と拳を掌に当てて鳴らし、一斉が構えたその時。
「どうしたの」
敢えてそのタイミングで、俺は背後から声を掛けた。
決して大声ではないのに。
自分たちの感情に集中し過ぎて、全く気づかなかったのだろう。
ビクリ、全員が全員、身体を震わせたから、少しだけ俺も笑った。
「と、燈真さんっ!!」
弾かれたように振り返った男には、実は見覚えがあった。
だからこうして追いかけてきたのだ。
「え、どういうことだよ…」
「誰だよ…」
大柄ではあるが、まだ20にもなっていない男達に動揺が広がる。


