ー『燈真さんみたいに、男だったら良かったのにねぇ。あの子のせいで、愛想尽かされちゃった。』
何度も結婚と離婚を繰り返し、父が手にしたいものが何だったのか。
思い過ごしであればと願う程、それ以外あり得ないという結論しか見えてこなかった。
気付かなければ、良かったんだろうか。
でも俺は、気付いてしまっていた。
そうじゃないといいのにと、どんだけ祈った事か。
ーそうか。
ーあの女(ヒト)の体調の悪いのって。
両脇で握りしめた手は、爪が食い込み、ギリギリと音がしそうだった。
「…今度は、男、なんですね。」
内奥の感情を踏み潰し、出てきた声は、思いの外、冷静に響く。
父は、そんな俺を、鼻で笑った。
「流石だな。優秀に育てただけはある。」
父は。
機嫌の良い時、片眉を上げ、反対側の目を閉じる。
殆ど、傍にいることはなかったのに。
どうして俺はそんな事、覚えてしまったんだろう。
「お前には、有我の名前は、捨ててもらう。 今後一切名乗る事のないように。正式な後継ぎが出来た今、お前には進学も要らない。」
正式なー
正式じゃない、俺は。
俺は、用無しか。


