昨年から、柊はずっと体調を崩していた。

以前は、朝に昼に晩に、料理の腕をふるっていたけれど、今では部屋から出てくる事すら、ままならない。


出てこれたとしても、こっちには来ないから、様子は知らない。

もう大分長い事、顔を合わせていなかった。



俺が、あんな事を言った翌日も、柊の態度に変化はなく。


ひたすら笑って、泣いて、怒って、食べて、そして、俺と葉月の心配をしていた。


俺が引いた線は、あっさり無視された。

だから、俺としては、体調のせいで、図らずも柊と顔を合わせなくなって、助かっていた。


ー一応、合格した事位は、直接報告しておいた方がいいかな。



夜になって、家が静まり返った頃。


俺は、最低限の礼儀だ、ドア越しでも良いから伝えよう、と柊の部屋へ向かう為、自室を出た。


が。



「おかえりなさいませ、ご主人様。」


玄関から聞こえてきた声に。


「ーおかえりなさい。」


驚きと少しの喜びで、顔を出した。



「おぉ、燈真。まだ起きてたか。良かった。」



予定なく帰ってくる父は珍しい。

まして、こんな遅くなって。


ー合格発表だったからか?


気に掛けてくれたのかと思うと、素直に嬉しかった。



「はい。あの、、」


「ちょうど、書斎に呼ぼうと思っていた所だ。来なさい。」


今迄一度だってなかった、父からの誘いに、今度こそ、本気で驚く。


「はい。」