例えば。
父親がいて。
母親がいて。
そして、子供がいる。
ちゃんと血が繋がってて。
それがふつーの。
世間一般の家族だとしたら、俺はそんなもの、持ってなかった。
だけど、そんな括りが無くて。
ただ、大事で。
守ってやりたくて。
離したくなくて。
そんな存在を、家族と呼んでいいのだとしたら。
俺は確かに、持ってたよ。
ちゃんとした円じゃなくて。
無骨で歪で。
通りすがる10人がいれば10人全てが、見て見ぬふりをするような。
そんな無様な形だったけれど。
俺は、持ってた。
ー空生。
お前が詐欺師を辞めたいって言った時。
一番恐れてたのは。
『繋がり』が消えること。
だって、消えたら。
もう、俺が守ってやれないだろ。
ほら。
今みたいに。
もう。
守れねー、だろ。
「生、き…ろよ」
俺の知らないものを。
あの女からもらったんだったら。
いいか。
絶対に。
「死ぬなよ。」
この声が、ちゃんと音になったかどうか。
誰に訊いても。
もう、わからねぇだろうけど。