路地裏に、光が差し込んで。
ずっと、陽の当たらないと思っていた場所も、もしかしたら、一筋くらいは、照らし出される時がくるのだろうかー
そこまで考えた所で、脳裏に浮かんだのは、葉月や崇の顔。
そして、泣けなかった、自分。
ー違う。
そんなわけ、あるかよ。
駄目だ。
毒されてる。
この数秒の俺の思考を、消し去りたい。
感情はそのまま行動を促し、手にしていた獲物を振り払った。
獲物だったそれは、いつしか俺の手を包んでいたけれど。
同時に、ひゅ、と花音の呼吸音がする。
ー離れろ。
「あー!うざい…。空生も頭がおかしくなるわけだわ。俺、もう本気であんたの顔見たくない。馬鹿になる。」
ー早く離れたい。
早く。
一刻も早く。
この女から離れないと。
俺が、壊れる。
「…あの…」
一歩下がると花音がおずおずと俺を見る。
「どっか行って。」
そう言われても、それだけじゃ納得できない花音は、黙って俯いた。
ーもういい。
ーもう、解放してあげる。
「…心配しなくても、あんな使い物にならない男はこっちから願い下げだっつーの。」
俺とお前は、最初から。
別々の道を歩いてたんだ。
きっと。


