『と…ま…くん…』
雪が、降る。
自分の記憶の中にだけ。
白檀の香りと共に、甦る。
途端に手から力が抜けそうになるのを、なんとか堪えたものの、感覚が鈍くなった。
「あの、、時の中堀さんを、あなたが助けたのは…確かだから…」
ー助けた?
くらくら、する。
馬鹿じゃないの。
馬鹿じゃないの、この女。本当に。
「だから…感謝してるんです…」
この俺が、なんのメリットもなしに、助ける訳ないだろ。
空生は呪いにかかっただけ。
俺に取り込まれただけ。
助けた、どころか、最初より悪くなってたんだ。
「あなたが、良い友達とは言えなくても…あの時、中堀さんには、、あなたが必要で、、、正しくは無くても、、あなたが支えになっていたと、、思うんです。。。」
五月蝿い。
うるさいうるさい。
どんどん、しゃべる、この女を黙らせたい。
なのに、力が、入らない。
「前に、、、私に聞かせてくれましたよね…?ある、、男の子の話…」
怖い。
俺は、、この女が、怖い。


