笑える。
笑いすぎて、吐きそうだ。
「ー？…っ！」
静止していた頭が上がった瞬間、花音の喉元を、鷲が鉤爪で獲物を狩る時のように掴んでコンクリの壁に押し付けた。
「うっ…」
苦しそうに歪んだ顔。
「何甘いこと言ってんの？お前みたいな善人気取りの女、まじで俺大っ嫌い。」
ー足りない、もっと。
指に力を入れて、ぎりぎりと締め上げる。
じわ、じわ、花音の目に涙が滲む。
もっと、苦しんでよ。
「いくら昼間だってね？俺にとっての庭みたいなこの街に、のこのこ一人で現れて、無防備過ぎると思わない？しかも俺はあんたを消したいと思ってるんだよ？」
あの時だって、本気で殺そうと思ってたんだ。
綺麗事並べたって、汚いものは覆い隠せない。
「俺等の世界には、貸すも貸さないもない。」
情けは、格好の餌食だ。
だって、ここは裏切りの街。
そんな甘いと、あっという間に足下掬われる。
食うか食われるか。
それがここのしきたりなんだよ。
生も、死も、無償で与えられるものなんかない。
「……そ、、れでも…」
「！」
相当苦しい筈だ。
呼吸なんてほぼ出来てない筈だ。
意識だって朦朧となっている筈だ。
なのに、花音は、掠れ掠れの声を出し。
両手で包み込むようにして、締め上げていた俺の手に触れる。
