「ーまた、会っちゃったね。」
鎮火したと思っていた感情。
諦めにも似た収まり方ではあったけれど。
それが、本当はまだ燃え広がっていたんだと、思い知らされるように、こみ上げてくる、真っ黒なモノ。
「俺はもう大分前から、君の顔は二度と見たくないと思ってるんだけどなぁ。」
ー死ねば良かったのに。
そう思ってたんだし、今もそう思ってるんだから。
櫻田花音は、蛇に睨まれた蛙よろしく、動けない。
どうして。
こんな無防備で。
こっちが情けなるくらい愚かで。
これっぽっちも、強くない、こんな女に。
俺は、勝てなかったんだろう。
恐怖で固まるかつての獲物に、一歩、また一歩と近付いて。
「何で。」
つかえていた疑問を、吐き出した。
「警察に言わなかったの?俺の事。」
折角、賭けに勝ったんだからさ。
さっさと、止めをさせばよかったじゃん。
こんなんじゃ、賭けにならないよ。


