「もういい。お前は」
「燈真」
俺の言葉を遮って、崇が俺の名前を呼ぶ。
「あの、店に名前が、ない、理由。俺は分かってる…」
「ーーーーー」
やめろ。
「俺ら、三人に、は、、名前が、無い、から…」
やめろ。
俺は再び崇に飛び掛った。
「とくに、あ、おには……名前が、、、ほん、とう、に、なく、て…俺にとっても…お前にとって、も…空生は、特別…だから、な…」
「黙れ!」
ありったけの力を込めて、拳を振り上げる。
「お前…家族、が、欲しかったんだろ。」
僅か数ミリ下から聞こえた崇からの一言は。
「違う…」
俺の動きを、止める威力があった。
「俺ら、似てる、から…三人だけ、の家を…帰ってこれるよう、に…ルナの、、光を、、借りなくても、、良いよう、、、に…」
「違う!」
違うと言いながらも、自分の中身を露呈されているようで。
認めなかった自分の内側を剥がされているようで、痛くて痛くて仕方が無い。
今度こそ、振り落とした拳で、崇を意識が飛ぶまでにしてやってから、俺は首を振って、一人立ち上がる。
「俺は、そんな弱い人間じゃない…」
必死でそう呟き、言い聞かせる。
動かなくなった崇を尻目に、俺はふらふらしながらも、ノブに手をかけた。
瞬間、ドロリとした感触が手を伝い、いつかのように掌を見た。
空生の付けた返り血が、思い出された。


