ゆらり、立ち上がると、ギシ、とソファが軋む音がした。
そして、近付く。
口角が上がっている。
ー大丈夫だ。
俺は、笑えてる。
「燈真、俺さー」
ガシャーン!
入り口の前で立ち尽くし、何か言いかけた崇を、思い切り殴り飛ばした。
激しい音と共に床に転がった所に馬乗りになってまた殴った。
きちんと閉まらなかったドアの隙間から、溢れるルナの光が、真っ暗なこの部屋を視えるようにしてくれる。
「何て事してくれてんだよ。折角育てた金ヅルが逃げたじゃねぇか。ああ?お前のせいで、俺は大損なんだよ。」
崇は、抵抗しなかった。
俺にされるがままになっていた。
「なんとか言えよ。お前いつ死んでもいいって言ったよな?ルナに自分を縛るって言ったよな?あれは嘘かよ?」
胸倉を掴んで、視線と視線が交わるまで持ち上げ、問う。
「嘘じゃ…ない」
崇は切れた唇で、痛みに耐えながら、なんとかそう呟いた。
そんな崇を、俺はもう一度殴って、立ち上がり、背を向けた。


