夕方。
外は、春らしい陽射し。
暖かな木漏れ日。
俺とは不釣り合い。
開店準備に手もつけず、俺は今朝方の騒動からずっと、スタッフルームで電気も点けないまま。
ソファに座り、足をローテーブルに投げ出していた。
真っ暗な中、煙草の先端だけが赤く光る。
風が入り込む音が微かにして、誰かが来たのかな、なんて思うけど、立ち上がるのは面倒だった。
カン、カン。
ーああ、この足音は…
「燈真、いる?」
ノックの音と、同時に開いたドア。
それを横目で確認して、煙草をテーブルに押し付けた。
どこか、機嫌の良い声に。
死んだように沈んでいた感情に、火が灯る。
「お前さぁ、」
「俺のこと裏切らないって言わなかったっけ。」
闇に響く、自分の声。
真っ黒に塗り潰した、声。
「…言ったよ」
崇の呟くような返事に、吐き気がする。


