電気を点けないまま、真っ暗な部屋に入って。
ー大丈夫だ。
信じられない程の虚無感に襲われながら、必死で自分に言い聞かせていた。
いつだって。
そう、俺はいつだって。
いつ死んでも構わない、終わっても構わない。
そう思って生きてきたんだ。
だから、大丈夫だ。
飼ってた鳥が籠から逃げてったって。
育てた猫が、家を出て行ったって。
俺の悪運が、尽きたってだけで。
「救われてたってなんだよ…」
もし。
もしも。
この俺が、誰かに救われたことがあるとするなら。
『ギブソン、作ってよ。』
柄にもなく、この部屋で暴れまくったあの日。
空生は俺にそう言った。
何一つ、理由も訊かず。
何一つ、責めずに。
あれは、俺にとっての、救い、だったのかもしれない。
あれを、俺の救いというなら。
俺も崇も、空生に救われてた。
ずっと。


