お前は俺を選ぶべきなんだ。
俺とお前は、表裏一体なんだから。
「…あいつは…」
空生の視線が僅かに揺らぎ、そして、また戻ってくる。
俺を真っ直ぐに見て。
「自分が何かした、なんて、思ってすらいないよ。」
当たり前だ。
できないんだから。
そんな力、ないんだから。
「だろ??だからー」
だから、俺にーーーーー。
「けど、俺は救われてた。」
ーーーーーーーーー救われてた… ……??
空生は、俺の知らない顔で、俺を見る。
「…んだよ、それ。あんな女どこにだっているだろ!?」
救えない。
救える訳がない。
知らないんだから。
だって、痛みを知らないんだから。
この痛みも、涙も、血の味も知らないんだから。
癒せる訳がない。
あんななんの力もない女に。
「燈真には、わからないだろうね…けど、今度あいつに近づいたら、」
理解出来ない俺を、
絶望しかなかった目じゃなくて、
俺の知らない、
得体の知れない、
孤独じゃない何かを湛えた瞳で、
空生はきつく睨んだ。
「お前の全てを潰すから。」
初めて。
背筋がぞくりと、冷たくなった。
汚さじゃなくて。
狡猾さじゃなくて。
暗闇じゃなくて。
痛みじゃなくて。
俺の知らない強さ。
出逢った頃には無かったのに。
いつの間にか、空生はそれを持っている。
そして。
「ー俺はもう二度と、ここには戻らない。」
俺の手の届かない所へ飛んで行ってしまう。


