淡い色のカクテルが、カウンターを濡らし、ポタポタと端から零れ落ちる。
へぇ。
お前。
俺より、あんな女を取るんだ。
お前、そんなに馬鹿になっちゃったんだ。
ムキになって我を忘れる、なんて。
俺等はお前のそんな部分に惹かれた訳じゃない。
むしろ、そんな部分知らない。
そんな部分があるなんて。
知りたくもなかったよ。
「あの、馬鹿女の為に、そんなに怒れちゃうわけ。かっこ悪。」
「っ」
瞬間、空生はカウンターに飛び乗り越えて、俺に飛び掛った。
ガシャガシャーン!!!!
初めての事に、身構えてなかった俺は、見事に吹っ飛ばされ、その上に空生が馬乗りになり俺の首を持ち上げる。
「なんで、あいつにあんなことしたんだよっ!!!」
怒鳴る、空生なんて、俺、一度でも見たことあったかな。
なんで?だって?
ざけんなよ。
地面には砕け散ったボトルの欠片が落ちていて、俺はそれを手探りで掴むと空生に振り上げた。
「…、お前が、使いもんになんねぇからだ、よ!」
「!?」
ヒュッ、と風を切った鋭利な先端は、空生の頬を掠る。
「折角育てた俺の金づるが、あんなどうでもいい女に盗られてたまるかよ!」
形勢は逆転。
今度は俺が空生に覆い被さった。
「なぁ?お前勘違いしてない?」
ーなんでそんな偉そうに言えるんだか、知らないけど。
その首をぎりぎりと絞め付けながら、俺は言った。
「お前は疫病神なんだよ。俺が拾ってやったから、今こうなれたの。」
「く…」
疫病神。
それが与えられたお前の役割なんだから。
だから何をするにも、誰かを傷付ける。不幸にする。
深く関わり過ぎた人間は、皆死ぬんだよ。
なぁ、あの女もーー
「ーーーーー。」
空生のコートの一箇所が、どす黒くなっているのに、ふと気付く。
見れば掌にも血の跡が。
まさか。
「まさか、あの女、助かった、とか言わないよね?」
俺、賭けに負けた訳?


