それから崇とは話をしなかった。
というよりも、崇が俺を避けているような態度を取っていた。
ルナは一番忙しい時間帯だったし、暇はなかったけど。
その内、客入りも落ち着いてきた頃。
「そろそろ、葉月のジンフィズ、客に出してもいいよ。」
作業の合間、休憩から戻ってきた葉月にそう言うと、葉月は目をまんまるくさせて、一瞬停止した。
「……うっ……そ」
ジンフィズはシンプルだが、作るのが難しいカクテルで、これが出来れば、バーテンダーとして認められると言っても言い過ぎじゃない。
葉月は最初こそ下手くそだったものの、先日作らせた時は良い線だった。
まぁ、作らせて2年半。
人より時間掛かってるけど。
「やっ…たぁー!!!やっと、合格点もらえた!!」
無邪気に喜ぶ妹を横目に。
ーもう直ぐ、夜が明けるな。
時計を確認して、俺はそう思った。
この時期、朝は暗くて。
だから、まだきっと月が出ている。
風が強かったから、雲が払われて、よく見えるだろう。
そんなことを考えながら、シェイカーを振るい、出来上がりをグラスに注ぐ。
と。
ザワ、入り口付近が一瞬、騒がしくなって、直ぐに水を打ったようになる。
そして。
「おっ、零じゃん!どうだった?歩道橋…」
崇もそれに気付いて、うっかり口を滑らした。
ーやっぱり、花音と空生を会わせようとしたのはお前かよ。
俺はグラスに視線を注いだまま、小さく笑った。
ほんと、お節介。


