「久しぶりですね。何飲みます?」
接客を始めた俺に背を向けるように、崇は正面の指定席から身体をズラして、空生が初めて来た時に座った隅の席に移動する。
俺はそれを背中で感じながら、少し年配の客の相手をする。
表面上は、変わらない。
いつもと何も。
怒りで手が震えることもない。
だが。
ー【次】ってなんだよ。
心中は、穏やかとは程遠い。
次が来ない人間はどうするんだよ。
学習したんだ。
どんなに辛くても明日はやってきてしまうって。
どうしたって、変わっていかなきゃいけないんだって。
もがいても何しても、変わらないんだって。
逃げ道なんかどこにも、ありはしない。
そこまで考えた所で、はた、と気付く。
ー崇の心残りが、どう、花音に繋がるんだ?
崇の心残りってなんだ?


